実行委員会からのご挨拶

"POWER TO MAKE YOUR DREAM COME TRUE" というメッセージは私が大学生だった1990年頃に所有していたパソコンと同シリーズの機種の本体に書かれていたものです。その当時、個人でも買える多種多様なパソコンが毎年のように発売されており、新しい機種が出るたびに、使える色の数が増えたり、処理速度が上がったりして、それまでできなかったことができるようになり、パソコンの POWER つまり処理能力の向上で夢がかなっていくように感じられました。

最近は個人で使うパソコンで劇的な性能向上は感じられなくなってきましたが、幸いなことにコンピュータの処理能力の向上は現在も続いており、年々研究で使う計算機の速度が上がっていることは実感しています。分子シミュレーションを専門とする研究者としての夢は、目で見えるぐらいの大きさの複雑な現象をありのままに原子レベルで再現することです。まだまだそこまでたどり着くことは難しそうですが、目標を持つことは夢を実現するための大きな原動力になりますので、少しずつでも目標に向かって進歩を重ねることが大切なのではないかと思っています。

さて、今年は13年ぶりに福井で分子シミュレーション討論会を開催できることとなりました。スーパーコンピュータのランキングリストである TOP500 に掲載されている計算機の計算性能の総和は、この13年で160倍になっています。我々研究者はその恩恵を受けて、以前はできなかったような長い計算や大きな系での計算ができるようになりました。今回の討論会では、13年前に比べてさらに高速になった計算機の性能向上を活かした研究成果の発表が行われることを期待しています。討論会の開催形式は可能な限りコロナ禍前のものに戻すことを目指しており、対面での討論や交流などが活発に行われるよう、多くの方々のご参加を実行委員一同心よりお待ちしています。

今後コンピュータの高性能化が、どこまで続くかはわかりませんが、社会の要請によりコンピュータの性能が向上し、研究者がその POWER を使いこなして研究成果を社会に還元するという好循環が、これからも続いていくことを願っており、今回ささやかではありますが研究の発展に貢献できることをうれしく思っています。

2023年7月吉日
第37回分子シミュレーション討論会実行委員会
福井大学 古石 貴裕